2009年に開始された太陽光発電の余剰電力買取制度は、2012年に「再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)」に移行しました。そして、2019年にはこの固定価格買取保証期間が順次満了を迎えることになり、「卒FIT」「太陽光発電2019年問題」等と呼ばれ話題になっています。
買取保証期間の10年を過ぎても太陽光発電設備は発電し続けますので、「卒FIT」ユーザーは、自由契約によって余剰電力を売電するという選択肢を取るか、あるいは蓄電池を導入して太陽光で発電した電力を自家消費するかを選ぶことになります。
仮に買取期間が終了する卒FITユーザーが、引き続き余剰電力を売電する選択肢を取る場合は、選ぶサービス(業者)にもよりますが、これまでの買取価格の8割減となることから、太陽光売電益を家計のアテにしている世帯は大きな打撃を受けそうです。
そんな折、セキスイハイムの親会社である積水化学工業株式会社が卒FITユーザー向けに余剰電力買取サービス「スマートハイムでんき」の提供を2019年9月から開始することを発表しましたので、本記事にて詳細を紹介したいと思います。
余剰電力買取サービスとは?
積水化学工業が開始する「スマートハイムでんき」は、同社セキスイハイムに居住のFIT終了となるユーザーから余剰電力を買い取り、他のセキスイハイムに居住のユーザーおよび同社グループの工場や事業所へ供給・販売するというものです。
2019年には全国で約54万棟の卒FIT邸が生じ、その内セキスイハイムのユーザーは約6万棟と1割以上を占めています。
これは一事業者としては最大規模であり、積水化学工業の執行役員は会見の場で「FITを推進してきた我々の課題」と説明しています。
そこで、積水化学工業は、太陽光発電システムの普及促進によって顕在化しつつある電力の需給バランスの課題解決に貢献するとともに、得られた対価を顧客に還元するサービスの実現に向け検討を進めるために、同社住宅部門セキスイハイムの顧客(オーナー)から買取った余剰電力を新しいセキスイハイムの生産や、その他積水化学グループ製品の生産に活用することで持続可能な社会の構築への貢献を目指すことを掲げています。
固定買取価格保証制度(FIT)終了後は?
それでは、現在の固定買取価格保証期間(FIT)と終了後の違いについて見ていきます。
FIT制度が適用されている間は、発電を行っている日中には可能なかぎり節電して売電に力を入れることで売電益を多く受け取ることができました。
というのも、固定買取価格が48円と高額のユーザーにとっては、1kwhあたりの売電価格の方が買電価格より高額であるため、日中の発電時に無駄な電力を消費しないことで多くの売電が可能になるからです。
しかし、FIT終了後は、売電価格が1kwhあたり約8円と大幅に下落するため、日中の電力消費をセーブして売電益を期待するよりも、発電した電力を自家消費した方が電気代(買電)の節約にも繋がります。
これを分かりやすく示したものが次の図になります。
そこで、太陽陽光をより有効活用するために同社は蓄電池の導入を推奨しているのです。蓄電池システムを活用することで、日中に電気をためておき、夜間はためた電気で生活して電気をなるべく買わない暮らしを目指せます。
気になる買取(売電)価格は?
さて、気になる買電価格は次のとおりです。
- ソーラー+蓄電池設置の場合 12円/kWh
- ソーラーのみの場合 9円/kWh
※2021年3月までの価格(翌年以降は専用サイトで発表)
上記のとおり蓄電池システムを導入しているユーザーを優遇し、12円と卒FITを対象とした事業者の中では魅力的な金額となっています。
そもそも蓄電池システム導入には、メーカーや容量にもよりますが、150~200万円ほどのコストが必要になります。
これを高いと見るか安いとみるかは居住人数や日中の電化製品の使い方によって大きく異なるため、売電価格の差をメリットと言えるかは微妙なところです。
また、お住まいの地域によっては導入の際に一定の補助金を支給する自治体もありますので、コストカットにも繋がります。導入を検討される方はぜひご確認ください。
申込方法は?
現在ご契約中の電力会社からFIT終了の6~4ヶ月前に「買取期間満了のお知らせ」が届きます。同お知らせを保管してスマートハイムでんきコールセンターに問い合わせてください。
また、スマートフォンやパソコンからも仮申し込みが可能となっています。
リンク先:セキスイハイム「スマートハイムでんき」
電気の販売(売電)について
2019年9月から、電気の販売は積水化学工業株式会社が行います。まずは、東京電力エリア・中部電力エリアを限定に先行で売電を開始し、同年11月より全国で供給開始される予定です。
なお、売電価格は未定です。同年7月にスマートハイムでんきのホームページで電気代の計算ができるようになります。
ただし、「スマートハイムでんき」では、オール電化対応の契約プランの用意が無いため、オール電化のご自宅では電気代が高くなってしまいます。
オール電化契約の方は現在の契約を継続した方がメリットが大きいので、スマートハイムでんきも買電は現在の電力会社との契約継続を勧めています。
買取のみは可能?
スマートハイムでんきのホームページによれば、電気の購入は現在契約の電力会社のままで、太陽光発電の買取のみをスマートハイムでんきにすることも可能です。
売電の買取は申込者の指定する銀行口座に3ヶ月に一度の頻度で振り込まれます。これまで売電は毎月指定する口座に振り込まれていましたが、スマートハイムでんきに申し込んだ場合は3ヶ月に一度の精算になります。
最後に
太陽光発電システムもメリットとデメリットがあります。
買取固定期間が過ぎた場合に「元」が取れているかどうかも買取価格次第であり、機材等のメンテンナンスや修理・交換が無く安定的に稼働していれば、電気代も節約できるという面もあります。
セキスイハイムがスマートハイムでんきの提供を開始することで、固定価格買取保証期間が過ぎても引き続きセキスハイムに売電ができるという見通しが立てられることはハイムのオーナーにとっては魅力的である一方で、蓄電池システム設置のユーザーを太陽光パネルのみのユーザーより買取価格を3円高く優遇していることから、蓄電池システム導入も推奨する営業の動きが見て取れます。
しかし、蓄電池システムも20年、30年も安定的に稼働し続けるというものではなく、使用状況や性能による個体差などからおよそ10年前後が交換(買いなおし)時期とも言われているため、果たしてランニングコストを上回るメリットが望めるかについては疑問があるところです。
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